2008-06-28

ヴラトコヴィッチ、公開講座&ミニコンサート



2008年6月26日
かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール
主催:日本ホルン協会、共催:かつしかシンフォニーヒルズ

公開講座
R.シュトラウス ホルン協奏曲第1番
ホルン:根本めぐみ(東京芸大1年) ピアノ:遠藤直子

R.シューマン アダージョとアレグロ
ホルン:松坂隼(読響団員) ピアノ:居福健太郎

ミニコンサート
ホルン:ラドヴァン ヴラトコヴィッチ ピアノ:児嶋一江
P.デュカ:ヴィラネル
J.ラインベルガー:ホルンソナタ
アンコール
メシアン:「峡谷から星たちへ」より第6曲「恒星の呼び声」

日本橋から約40分の京成青砥駅、なれない電車でよくわからず押上行きに電車に乗ってしまい、押上で特急に乗り換えると超満員。今回はコンサートを聴きに行くだけだが、こんな電車で通勤したくないと思った。

会場に着くとそこにはすごい光景が。
N響の樋口さんが受付に立っているし、有馬さんや水野さん、吉永さん、田場さん、世川さん、福川君、・・・・、日本中のホルン吹きが集まってしまった、と言う光景である。そしてその生徒さん達を含み、多くの学生たち、聴衆は完全に二極分化していた。

最初に樋口さんが挨拶に立ち、今回のコンサートの趣旨を述べたあと、会場にいる全員で数日前にご逝去された元N響の千葉馨さんのために黙祷を献げご冥福をお祈りした。

公開講座最初の根本さんは、日本ホルン協会のソロコンクール(クラス別)で1位になったという。第1楽章を美しく伸びやかな音でロマンチックに演奏した。ヴラトコヴィッチは絶賛。ヴラトコヴィッチはR.シュトラウスの生い立ちと父の影響を丁寧に説明し、この曲の背景を理解させてくれた。

それから、彼女がF管を多用しているのを見て、F管の重要性を説いた。ダブルホルンではアーティキュレーションを含めていろんなF管の使い方ができるし、アメリカでは真ん中のCから下はF管で吹く、ドイツではCから下でもかなりB管を使うなど国によって使い方は様々だが、息の支えが必要なF管の吹き方は、ダブルホルンの吹き方には重要で、常にその吹き方をベースにしなければならないと強調した。

曲にはいると、まず、手書きの楽譜には冒頭にenergicoだけでなくrecitativoとも書かれていることを紹介した。だから、拍にとらわれずに呼びかけるように自由に、しかしオーケストラに続く最後の2つの2分音符はテンポどうりに、と言うわけだ。これは勉強になった。

彼女はそのアドバイスを的確にこなしていく。途中、ピアノで音色を少し暗く変えるように要求があった。ヴラトコヴィッチはいくつかの方法があるという。音程に影響が出ない範囲でベルに手をかぶせる、口の中を広げて舌を後ろに持って行く、などだそうだ。今度一度やってみよう。

また、ピアノで柔らかく分散和音を駆け上がるフレーズの吹き方では、息をたっぷりと使うためにマウスピースだけで練習する方法を提示してくれた。自分にできるかどうか解らないが今度やってみよう。あと、3連符の続くフレーズ。クラリネットやファゴットも一緒に演奏していることを認識して、テンポは速くならずに正確に、しかも音を立ててはっきりと強調して演奏することを要求した。

アダージョとアレグロを演奏した根本君は、美しい音だが小さなダイナミクスであまり抑揚がなくアダージョを演奏した。あまり面白くなかった。ヴラトコヴィッチはバルブホルンの歴史に簡単にふれた上で、シューマンンのロマン的な音楽について丁寧に説明した。この音楽の持つ感情を音にして会場のお客さんに伝えなければならないのだ、と。

ヴラトコヴィッチの演奏は素晴らしかった。ヴィラネルとラインベルガーのホルンソナタは、ホルンのソロの曲ではポピュラーで、学生も試験の曲として良く演奏する。そのお手本を示す意味もあったのだろう。ヴィラネルの最初はナチュラルではなく、全てヴァルブを使って演奏した。やはりこの方が美しい。デュカは試験曲としてナチュラルを指定したんだろう。ラインベルガーは、以前吉永さんの演奏を聴いて良い曲だと思ったが、ヴラトコヴィッチのダイナミックでしかもロマンティックで雄大な曲想には、ずっと引き込まれてしまった。

アンコールは、昨夜、東京文化での曲と同じメシアンの「渓谷から星へ」であった。しかし、昨日のとは、何が違うのか解らなかったが、少し印象が異なり親しみやすく聞こえた。自分が曲を覚えたからなのか、ヴラトコヴィッチが公開講座の中で言っていたが、演奏する場所によって吹き方が違うからなのか。

2日間のヴラトコヴィッチの追っかけだった。妻はその前日に阿部麿くんのコンサートに行っているのでホルン3連チャンだった。