8267イオン(株)、創業250年を迎えた国内小売り事業は転換点に、活路は「質」への転換と海外事業で小売業世界トップ10をめざす~~5月15日株主総会
「--イオン、8月21日に純粋持ち株会社に移行を決定--
イオン(株)は15日に株主総会を開催、8月21日に純粋持ち株会社に移行することを正式に決めた。M&Aを繰り返しながら規模を拡大してきた同社だが、連結グ ループ経営による経営の効率化をめざし事業運営とグループの統括機能を分離する。イオンの小売り事業は会社分割後、傘下の新会社イオンリテールに移 す。岡田元也社長は前期に10期ぶりの減益になったことについて「満足の得られる商品と売り場の改革が後手に回っていた」と株主に謝罪。国内小 売業事業は転換点を迎えたとし、これまでの規制緩和を追い風にした規模の拡大から、国内出店を抑制し既存店のてこ入れなどによる質の向上への転換と、中国を中心にアジア各地への出店を強化する方 針を示した。」
新聞記事風に書くと上記のようになるのだろうが、実際の株主として株主総会に出席すると興味深い情報が得られた。 売上高5兆円、持ち分法適用会社を含めると7兆円を超える売上高を誇る国内最大の小売業グループとなったイオン、しかし、利益は大きく伸びることなく前期2008年2月期は増収減益となった。
http://money.quick.co.jp/kabu/stock/account/1_8267/T.html
委 員会設置会社であるため、配当金支払いのお知らせとともに株主総会招集通知が送られてきた。それによると、これまですすめてきたグループ経営改革の最終段 階として、イオン本体の純粋持ち株会社体制への移行について株主総会で決議するという。これまでは郵送するか電子行使していたが、今回は時間が取れそうな ので、株主総会に出席することとした。 株主総会終了後には懇親会が行われる。役員との懇談やグループの各事業の紹介、プライベートブランドの食品の試食なども出来るらしい。懇親会への出席の通知だけ返信した。
3000名の株主を集める幕張メッセ
2001 年以降、「開かれた株主総会」に切り替えるとともに、個人株主を増やすために、株主優待の導入、単元株数を1000株から100株にくくりなおし、1:2 の株式分割、自社株買いや安定配当などをとおして「お客様株主」というコンセプトで個人株主を増やしてきた。株主総会後の懇親会の開催など株主とのコミュ ニケーションを強化してきた。その結果、本社の会議室ではとうてい収容しきれないぐらいの出席者が集まるようになった。
JR 京葉線の海浜幕張駅を降りると10メートルおきぐらいに会場を案内するプラカードを持ったスタッフが立ち、親切に案内してくれる。同時に10数人に対応で きるような会場受付で記入済みの議決権行使書を渡し、首から提げる出席者証と会場の案内図を受け取る。受付左側には、喫煙室とドリンクサービス。たばこを 一服してから会場にはいる。 広大な展示会場にしつらえた演台と前後左右に設けられた7つの大型スクリーン、最後部には記録 用のテレビカメラが2台、会場を埋め尽くす膨大な数の椅子。その椅子にどんどん人が吸い込まれていく。
案内をしてくれた担当スタッフに聞くと3000人以上の出席を見込んでいるとか。ちょっとした音楽コンサートをはるかに超える規模だ。株主総会に対するイメージが変わった。暇な年寄りと機関投資家のアナリ ストなどが出席するのだろうと思っていたが、見渡すとそれらの人だけでなく40~50代の投資家や主婦などが半数近く参加していることに新鮮さを感じた。
ビデオによるわかりやすい事業報告
定 刻の10:00ちょうどに株主総会が開始。総会定足数の報告に続いて、株主総会の議長を務める取締役会議長の野島氏の挨拶と円滑な議事運営に対する注意事 項の説明があった。
開口一番に株価低迷のお詫びがあったのにはためらってしまった。確かに業績期待は少ないが、サブプライム問題など外部要因も大きい。ま た、足下では薄商いながら外国人の買いも増えており、株式市場は明るさを増してきた。業績の向上と株主価値向上についての報告と計画を聞くのが株主総会な ので、最初に謝られたのでは何か落ち度があったのかと考えてしまった。
事業報告は図表を交 えたビデオでの説明。既に送付されている事業報告と同じ内容なのだが、壇上で読み上げられるよりははるかにわかりやすい。連結売上高5兆円にのせたが利益 の伸びはマイナスに転じた。総合スーパー事業で営業収益が減少、専門店事業の米タルボットの低迷、サービス事業のイオンクレジットが法改正により減益に なった。しかし、セグメント別では総合小売り事業に比べデベロッパー事業やサービス事業の利益率の方がはるかに高い。連結で5兆円の売上のうち総合小売り 事業は4兆円の売上だが、連結営業利益1500億円のうち総合小売り事業は690億円にしかすぎず半分にも満たない状況だ。
議事は、監査委員会の報告や剰余金配当など報告事項が終わった。
期待される株主の質の向上
今回の株主総会での決議事項は、純粋持ち株会社に移行するための本社事業の100%子会社への吸収分割契約の承認とそれに伴う定款一部変更、取締役選任の件の3件である。
委 員会設置会社では、事業報告や剰余金処分については取締役会に一任されているため株主総会では報告のみで承認手続きはない。それを認識していない株主もい るようで、隣に座った人もとまどった様子で私に聞くので、「もう配当金は受け取ったでしょう」と簡単に説明させてもらった。
決 議事項については、総会招集通知と一緒に説明資料が送られており事業報告のビデオでも一部説明されていたが、議長によりスクリーンに図表を映し出しながら 丁寧に説明された。その後、質疑に入ったのだが、株主からの質問が決議事項の審議とはあまり関係のないものが多いのに驚いた。これから成果をどう出すかと 言う段階であるにもかかわらず取得したダイエー株の価格低迷に関する経営者への無意味な糾弾や細かなサービスや商品の不備を突くものなど。中には乱暴な言 葉遣いで昔の総会屋気取りの人がいるのにはあきれてしまった。
少なくとも現代の会社経営について基本的な事項を理解しておくだけでなく、議事について適切 に理解し簡潔に発言することが、「開かれた株主総会」に出席する株主の義務だろう。 結局、拍手による決議事項の採択・承認が終わったのは、11:50になった。
2010年には営業利益2500億円、株価3000円を目標
続いて岡田社長から経営方針の説明。こちらもスクリーンに図表を映し出しながら丁寧に説明された。 ま ず前期の決算の背景を簡単に説明しながら、減益決算の反省として「満足の得られる商品と売り場の改革が後手になった」と謝罪した。そして、米タルボットや イオンクレジットの業績悪化の把握が遅れ、2度にわたって業績予想修正を出さざるを得なかったのは失策、と厳しく評価した。
これまで「流通コスト削減」と「消費者代位機能」の実現を目標に、「規模の拡大」と「インフラの整備」の2つの成長戦略で引っ張ってきた。しかし、規制緩 和を追い風にした積極的な出店による規模の拡大は限界が見えてきた。一方、流通網などのインフラはほぼ整ってきた。プライベートブランドによる製造小売り への進化も達成しつつある。売上高5兆円を実現したが収益性や財務効率は低いままだ。
2007年はこれまでの拡大路線の転換点として、今後は、既存店のてこ入れなど獲得した「規模」を「質」へ転換することによる収益力向上と、モータリゼー ションの普及が著しい中国を中心としたアジアへの事業展開により収益の拡大を図り、2010年には売上高5兆8000億円(08年2月期5兆1000億 円)、営業利益2500億円(同1500億円)、純利益1000億円(同440億円)、ROE10%(同4.9%)、株価3000円を目標にすると言う。 純粋持ち株会社への移行により、連結グループ経営の体制が整い、その機能の発揮も期待される。
懇親会に出席できなくて残念
岡田社長の経営方針の説明が終わり、一般の質疑が始まったが、もう既に13:00。次の予定があるので退席せざるを得なかった。残念だ。
懇親会で資本政策や財務効率の向上策、電子マネーなどの個々の事業戦略、個人的な興味のイオン銀行の利便性向上、環境や地域社会などの貢献活動だけでなく様々な社会貢献活動など、店などでは聞けないことをいろいろと聞きたかった。また、別の機会を探すことにしよう。
懇親会に出席しなかったがお土産をくれた。出席した株主のみに対する利益配分になりかねないので、株主優待と同様にどうかと思うのだが、うれしい。日常の買い物に使えるエコバッグに入ったフェアトレードのオーガニックコーヒーとかりんとう、書籍、パンフレットだった。
当面は、hold。下押す局面があればbuy。
筆者は、イオン株式の保有者です。 記事の内容は株主総会およびこれまでに会社から発表された情報を元にしています。見解や意見にわたる部分は筆者個人のもので他の組織などを代表するものではありません。 また、有価証券の売買を勧誘するものではありません。売買にあたってはご自身で判断して下さい。
2008-05-15
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